・パーマネントトラベラーって誰が言い始めたものなの?
結論から言ってしまうと、Harry D. Schultzが提唱した考えがもとになっています。
メディアに注目され始めたのは、イギリスの出版社だったScope International Limitedという会社が1980年代〜90年にかけて彼の理論をシリーズ化してthe timesに掲載したのがきっかけと思われます。
また、日本ではパーマネントトラベラーという呼ばれ方をしていますが、英語ではPT、Perpetual TravelerやPrior Taxpayerという呼び方が主流です。
◆パーマネントトラベラーの起源はアメリカ?

Harry D. Schultzって?
Harryは1923年にアメリカのミルウォーキー州で育ち、投資アドバイザー兼記者として活躍しました。また自由至上主義(Libertarianism)を広める運動をしていたことでも知られています。
自由至上主義とは:
個人的な自由と経済的な自由の両方を重視する政治思想のことです。個人が望む全ての行動は基本的に自由であり、経済面においては国家が企業や個人の経済活動に干渉することに強く反対しています。そして自由に個人の利益を追求し、競争することが社会全体の利益の最大化に繋がると考えています。
彼はスリーフラッグ理論(Three Flag Theory)を根拠にすべての人に2つめの国籍の取得、税金の安い国への移住、資産を守るために母国から資産を持ち出すことを推奨しています。
スリーフラッグ理論とはパーマネントトラベラーが実践するべき、ファイブフラッグ理論の土台になっている考えです。政府による干渉と個人のプライバシーの流出を防ぐために、以下の3つの国を使い分けることをすすめています。
- 国籍(市民権)のある国
- 住所のある国
- 資産運用を行う国
ファイブフラッグ理論についての詳しい記事はこちら

Harryはこの理論に基づき、1989年に 『PT : A coherent plan for a stress-free, healthy and prosperous life without government interference, taxes or coercion』(現在7版まで出版されています)
1993年には『PT2 : The practice: freedom and privacy tactics: A reference handbook 』を出版しています。
残念ながらどちらも翻訳はされていませんが、題名からどういった内容であるかは予想ができます。直訳になってしまいますが
1冊目は「政府による干渉、税金そして弾圧からストレスフリーで健康的で繁栄した人生をおくるための一貫した計画」
2冊目は「実践:自由とプライバシー戦略のハンドブック」
と言えるでしょう。
アメリカは税制において属人主義をとっている国なので、アメリカ人である限りどの国で収入を得たとしてもアメリカに納税する義務があります。
しかし、アメリカ政府は二重国籍を認めているので、他国籍を取得することは違法にはなりません。タックスヘイブンで資産運用をし属地主義の国で国籍を取得するという考えは、この権利を逆手に取った発想と言えますね。
日本では属地主義をとっているので、日本国内で発生した収入に対して税金が課されます。それに加えて日本以外の国籍を所持することも認めていないので、アメリカと正反対といえます。
◆パーマネントトラベラーの日本での起源

日本では橘玲さんが2006年に
PTとして世界を飛び回っている、元弁護士の真鍋のもとに「一円も納税することなく、二十億の資産を息子ではなく孫に相続させたい」という依頼が届く・・
という あらすじの長編小説 『永遠の旅行者<上>』・『永遠の旅行者<下> 』を出版しています。
橘さんは他にも『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『上級国民/下級国民』などノンフィクションで金融関連の本も執筆していらっしゃいます。
個人的に中立を保っていいてわかりやすく参考になるので、使っている方はtwitter「@ak_tch」をフォローしておくのもおすすめです!
また、2012年にはPT研究者である木村昭二さんが著した
『終身旅行者PT 資産運用、ビジネス、居住国分散』―― 国家の歩き方 徹底ガイド (現代の錬金術師シリーズ)が発売されています。
こちらの方がより現実的で、データが多く掲載されています。指標を用いて国別の比較であったり、税率、不動産相場など細かな点にも言及されており、実体としては入門書以上の内容であると思います。
- パーマネントトラベラーの起源は1980年代よりも前からあったということですね
- 日本では属地主義をとっているので他国籍をとる必要はあまりないかもしれません